ITエンジニア需要増で転職は「売り手市場」に、年収100万円アップが現実へ
転職者を対象にした業種別の求人倍率を見ると、「IT・通信」が6.86倍で全体平均の2.6倍を大きく上回る――。パーソルキャリアの転職サービス「doda(デューダ)」がまとめた2024年6月の「転職求人倍率レポート」によるとIT・通信の転職求人倍率は高水準だ。IT・通信業界で転職者が「売り手」市場になっている。
業種別の転職求人倍率(出所:パーソルキャリアの転職サービス「doda」のデータを基に日経クロステックが作成)[画像のクリックで拡大表示]
ほかの職種に比べて高い求人倍率で転職しやすいだけでなく、ITエンジニアは今、転職で収入アップを目指しやすくなっている。
実際に年収がアップする転職を実現した人が転職前に就いていた業種をみると、平均の給与アップ額が最も大きかったのは、平均103万5927円で「IT・通信」に所属していた人だ。100万円を超えた業種はIT・通信のみだ。
転職時の(業種別)年収の平均アップ金額(出所:パーソルキャリアの転職サービス「doda」のデータを基に日経クロステックが作成)[画像のクリックで拡大表示]
dodaの調査によると2023年12月時点でITエンジニアの平均年収は452万円だ。全職種の平均年収は414万円で約40万円高い。さらに転職によって100万円アップできるのはITエンジニアにとって大きなインパクトがある。
職種別の転職求人倍率を見ても「エンジニア(IT・通信)」は11.06倍と平均を大きく上回り、唯一10倍を超す職種だ。IT業界を支えるITの専門職も給与アップが見込まれている。転職時の職種別の年収アップ幅を見ても「技術職(SE、インフラエンジニア、Webエンジニア)」は113万8375円と非常に高い。調査で最も低かった「販売・サービス職」のアップ幅58万9931円に比べて2倍近いアップ幅だ。
コロナ禍をきっかけにITエンジニアの転職が増加
高い求人倍率や年収アップを踏まえ、ITエンジニアにとって転職は自らの処遇を改善する当たり前の選択肢になりつつある。
ところが実はつい数年前まで、ITエンジニアの転職はほかの職種に比べて決して活発ではなかった。そんなITエンジニアの転職状況が大きく変わった契機は「新型コロナウイルス禍だった」とIT系の転職支援サービスを手掛けるレバテックの泉澤匡寛執行役員は振り返る。
レバテックの調査によると、直近では多少落ち込んでいるもののITエンジニア(クリエーターも含む)の正社員の求人は新型コロナウイルスの影響が大きかった2020年から右肩上がりの傾向になっている。2021年10月以降、求人倍率は10倍を切ることなく推移している。
コロナ禍以降、ITエンジニアにとって転職しやすい状況が続いているのは間違いない。ITエンジニア側も「リモートワークを交える合理的な働き方や、年収アップを目指して転職する人が増えている」と泉澤執行役員は話す。
約2割のITエンジニアは転職で給与減少
ITエンジニアにとって転職しやすい環境が整っているとはいえ、ITエンジニアであれば誰もが転職に成功するわけではない。